コートの襟元が汚れてた

駅前の歩道を歩いていたら、後ろから「…すみません」と声をかけられる。知らない男性が私を見て手を上げてくるのだけれど、まったく知らない人だ。はて?道を聞きたいのだろうか?と思って戻ると、

「突然お声かけしてすみません。びっくりされたでしょう?私、これから知人と待ち合わせ場所に行くところなんですけど、実は観相学を勉強してまして、通りすがりにあなたのお顔を見たら、変化の相が強く出ていたので、それで呼び止めてしまったんです。貴方は大事なときにいます、何か変化を求めていることありませんか?…はあ、あまり自覚はない、ですか、でも変化の相が出ているんですよー。変わる時というのは、いいことだけじゃなく、悪いほうに引っ張られることもあります。そういう時にご自身の軸となるものが必要です。軸がしっかりしていれば、悪いほうに引っ張られることもなく…その軸をちゃんとするお手伝いができればなあと思っています。それに貴方はご先祖さまに強く守られています。この近辺でお誕生日かご命日の方がいらっしゃるんじゃないですか…命日?ソノ方とのご関係は?はあ、おばあさまですかー、生前はどのように接してました?あー、そうですかー。その方は人の為に働いていらした方のようですね。その功徳の積み重ねの上にあなたがいらっしゃるわけで…、ええ、守られていますよ。人からも優しくされるとかそういう感じなんですよー…」
顔の三分の一を隠すよなマスクをしていた私に観相学もなにもあったもんじゃないと思って、マスクしててもわかるものなんですか?と聞いたら、
「眼相(だったかな)というものがありまして、あと雰囲気というか全体を見ますので」という回答。
もう少しじっくりお話をしたいんですが、と言われたのだけれど。
妙な開運グッズを大量に購入と、運を掴むセミナーを受講させられて「貴方は選ばれた人間です。我々とともに人々を救いましょう」と言われ、貯金をすべて差し出して観相学を勉強して通りすがりの不幸そうな人に声をかけることになったら嫌だなあ、と思って、
待ち合わせと先ほどおっしゃってましたよね?そちらに間に合うようにしてください、ありがとうございました。といって切り上げてきた。
切り上げてはきたのだけれど、どうか、あの人が「人の話を聞かない奴なんて」とのろっていませんよに、とも今更思っている。話をあのまま聞いていたら、今頃家にいないかもー。こわい。